「冗談のつもり」で
Wikipediaに虚偽の書き込みがあり、ある人が暗殺関係者呼ばわりされているのにもかかわらず、Wikipedia側がそれを4ヶ月もの間放置していたという事件がありましたが、Nature誌がWikipediaの情報の正確さについて調査を行いました。
「Wikipediaの情報はブリタニカと同じくらい正確」--Nature誌が調査結果を公表
CNET Japan より
Nature誌の行った調査から、WikipediaとBritannicaが正確な情報源として同レベルにあることが明らかになった。
これは、非常に短絡的な結論の出し方だと思います。
第一に、Nature誌は科学関係の雑誌であり、今回の調査でも「科学分野の内容を比較した」だけです。ブリタニカやWikipediaは、科学分野以外にも多くの分野を扱っています。
第二に、John Seigenthaler氏が暗殺者呼ばわりされた記述について、問題は単なる「情報の正確さ」ではなく、名誉毀損です。全般的な情報が正確であっても、暗殺事件の関係者といった非常に深刻な情報が捏造されているのであれば、情報の正確度はかなり落ちることでしょう。
第三に、John Seigenthaler氏の件にしても、Adam Curry氏の件にしても、それらの編集は匿名でなされており、誰でも勝手に情報を操作できることはWikipedia特有の問題です。たとえ編集は匿名でなくとも、Wikipedia上では編集者の名前が出ないので、実質的に匿名と同じことです。そして、そのような情報をWikipediaの運営者がチェックするのは、すでに情報が公開されてからであり、John Seigenthaler氏の場合には4ヶ月間も虚偽の記述が放置されていました。
第四に、責任の所在です。情報の不正確さや名誉毀損問題について、Wikipediaの運営者は責任をとろうとしません。もし情報に関する責任がそれを記述した編集者にあるというのであれば、編集者の名前を明かすようにシステムを変えるべきでしょう。
というわけで、私は今回のような比較調査のやり方は公平なものではないと思います。